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慰謝料を減額したい、または払わないで済ませたい
不貞行為(浮気)の慰謝料を請求され、減額をしたいかたは、初期対応の手順を間違えないことが大切です。減額を成功させられるか、それとも拒否されるかの鍵は交渉、回答の仕方にあります。
たとえば、最初に謝罪文を送り、相手の怒りの感情が和らぐころを見計らって減額のお願いをしたほうが効果的な場合もあります。
こうした手順を間違えると、不倫の被害者である妻・夫の神経を逆なでし、減額に失敗する可能性が増すでしょう。
また、回答の際は、減額の理由を請求者に丁寧に説明することが重要です。たとえば、請求金額が相場に反して高すぎればそれを理由に金額を少なくしてもらえることもあります。
さらに、支払いを一括にするか、分割にするか、身内や金融機関から借金をする必要があるか、といったこともよく検討し、支払いの方法、時期を具体的に回答しなければなりません。慰謝料を請求されたときに、請求額どおりに払えないという人はけっこういらっしゃいますからね。
自分で減額交渉をする、弁護士を代理に立てる、あるいは、文書の作成だけを行政書士に依頼するなど、解決の仕方はいくつかあります。15年以上にわたり減額文書の作成サポートをしてきた行政書士が、解決までのプロセスを具体的実例を交えて説明いたしますので、ぜひ参考にしてください。
では最初に、どのような条件がそろえば慰謝料の減額、不払いの要求ができるのかを詳しく見ていきましょう。
慰謝料を払わないですませられる条件
相手はただの友達で、肉体関係はない
男女交際の事実がないのに、相手の夫・妻が思い込みで慰謝料を請求してくることもあります。肉体関係などなく、単なる友人として、一般的に許容される範囲で仲良くしているだけ(何人かのグループで旅行をするなど)なら、慰謝料を支払う必要はありません。
【重要判例】
判例 | 【最高判昭和48年1月15日】 |
判旨 | 不貞行為とは、『配偶者ある者が自由な意思に基づいて配偶者以外の者と性的関係を結ぶこと』である。 |
結論 | 不貞があったというには、肉体関係をもったという事実が必要である。 |
解説 | 単なるデート、食事は不貞行為とは言えません。ただし、不貞がなくても、夫婦関係を破たんさせる(離婚など)ような男女交際を続けていた場合は、不法行為の損害賠償が認められることもあります。 |
交際相手が既婚者だとは知らなかった
相手が結婚していることを知らずに性的関係をもった場合は、慰謝料を払わないですむかもしれません。不法行為は「故意」におこなった、あるいは「過失」があったという場合に成立するからです。
ここで注意しなければならないのは「過失」の可能性です。つまり、あなたの不注意で、相手が結婚していることを知らずにいた場合は慰謝料を支払わなければなりません。例えば、相手が職場の同僚で、既婚者であることは周知の事実だったというケースでは、知らずにいたあなたにも落ち度があったと判断されてしまうでしょう。
不倫をする前から既婚者側の夫婦関係が破たんしていた
相手と肉体関係をもったときに、相手の夫婦関係がすでに破たんしていた(離婚を前提に別居や調停をしているなど)場合は、慰謝料を払わないですむことがあります。あなたとの交際が、夫婦関係の破たんの原因になっていないことが重要です。
【重要判例】
判例 | 【最高裁判例平成8年3月26日】 |
判旨 | 配偶者が第三者と肉体関係を持った場合でも 、その夫婦関係がすでに破たんしていたときは、特別の事情がない限り、相手方は不法行為の責任は負わない。 |
結論 | 不貞を行う前から夫婦関係が破たんしていた場合は慰謝料を支払う必要がない。 |
解説 | 不倫慰謝料の裁判では、夫婦関係がすでに破たんしていたかどうかが争点になることが多いです。 |
慰謝料請求権が時効で消滅している
不倫慰謝料の請求権は、不倫の事実と相手を知ったときから3年で時効により消滅します。もし、その期間が過ぎていたら、時効になっていることを主張(時効の援用)して支払いを免れましょう。
自分の意思に反して無理矢理、性交渉をさせられた
腕力で押さえつけられた、睡眠薬を飲まされた、脅迫されたなど、自分の意思に反して性行為を強要された場合は、当然、慰謝料を支払う必要はありません。逆に慰謝料の請求や、刑事告発を検討しましょう。
慰謝料の減額を要求できる条件
一般的な不倫慰謝料の相場よりも高い金額を請求された
不倫の慰謝料がどのくらいになるのかは、過去の裁判例を調べることによってある程度わかります。ですから、もし請求された慰謝料が、一般的な相場を大きく上回るようなら、減額してもらえる可能性が高まります。
例えば、不倫を一度だけしかしておらず、請求者側の夫婦が離婚もしないようなケースで、500万円の慰謝料は高過ぎます。このような場合は慰謝料を減額してほしい旨を伝えてみましょう。
不倫の慰謝料がどのくらいになるのかを詳しく知りたいかたは、関連ページ【不貞行為・離婚の慰謝料相場】をご覧ください。
デートやキスはしたが、性交渉はしていない
既婚者と性交渉をしなければ、不貞行為とは言えず、慰謝料の請求理由にはならないというのが原則です。しかし、最近は(性交渉には至らない)キスや抱擁だけでも慰謝料を認める判例が見られるようになってきました。
たとえ肉体関係がなくても、夫婦関係を破たんさせる(離婚など)ような男女交際は不法行為になりうるということです。ただし、金額の面から見ると、性交渉があった場合に比べて少額になるケースが多いので、減額の理由になります。
請求者が不倫の悪質性を実際よりも過大に評価して慰謝料を算出している
不倫をしたことが事実でも、その状況(悪質性)に見合った慰謝料の額というものがあります。例えば、一度だけの浮気と、10年以上も不貞行為を繰り返していた場合とでは、裁判で認められる慰謝料の額も大きく違ってきます。
もし請求者が不倫の状況を誤解し、それをもとに慰謝料を算出していたら、事実を正しく伝えて減額をお願いしてみましょう。
では、請求者が誤解しやすい内容について、いくつか具体例をあげておきます。
- 実際は不倫を始めてまだ数ヶ月なのに、請求書には「5年間、不貞行為を繰り返していた」と書かれていた。
- 何度か肉体関係をもった相手が実は既婚者だったことがわかり、すぐに別れた。しかし相手の配偶者が、「既婚者と知りつつ不貞行為を繰り返していた」として、慰謝料を請求してきた。
- 仕事帰りに同僚と飲食店で軽く食事をしただけなのに、同僚の配偶者から「ホテルで食事をしたあと、不貞行為に及んだ」として、慰謝料を請求された。
- 会社の上司に強引に誘われ、立場上、断り切れずに肉体関係をもってしまったが、上司の奥さんから「主人を誘惑し、不貞行為に及んだ」として、慰謝料を請求された。
自分の経済力では請求額を払えない
学生やフリーターなど収入や資産が少ない人は、数百万円の慰謝料を払えないこともあるでしょう。そうした経済的事情も、減額を要求する理由になります。
自分で減額交渉をするときにどのような手順を踏めばよいか
不倫の慰謝料を電話や普通の手紙で請求されることもありますが、ほとんどの場合、内容証明郵便が利用されます(関連ページ【内容証明の書き方】で詳しく解説しています)。
請求書に「金300万円を10日以内に支払え。支払わなかったら裁判所に訴える」などと書かれていると、どうしてもその金額と、裁判を起こすという言葉に目がいってしまいますよね。
ですが、まずは差出人をよく確認してみてください。誰からの請求かでこれからの対応の仕方が変わります。
初めに内容証明郵便の差出人を確認する
請求者本人が代理人(弁護士)や代書人(行政書士など)を立てずに内容証明を送ってきた
請求者本人が差し出してきた場合に多い請求内容は以下のとおりです。
- 謝罪文を書かせようとする
- 不倫をやめるという誓約書を書くよう求めてくる
- 感情にまかせて高額の慰謝料を請求してくる
- 会社をやめるように求めるなど社会的制裁をちらつかせる
- 「不倫は許されない、けじめをつけろ」とあいまいな要求をしてくる
このように、専門家に相談していないため、感情のままに要求を書いてくるケースが多いようです。
高額な慰謝料請求や脅迫めいた要求には応じないように注意しましょう。不倫をした場合に果たすべき責任の範囲をよく理解して、冷静に相手との減額交渉ができるようにしたいものです。
弁護士が請求者本人の代理人として内容証明を送付してきた
弁護士の請求には次のような特徴があります。
- 訴訟前提の請求がほとんどなので、放置すれば裁判を起こされる
- 法律の専門家なので、請求内容に不備があることはまずない
- 請求書に書かれた事実関係に争いがあれば裁判になりやすい
- 【請求金額×○○%=弁護士の着手金+成功報酬】という見積で弁護士費用を算出しているため、請求金額は【相場の金額+弁護士費用】となり、相場より少し高くなる(300万〜500万円)傾向がある
弁護士によっては減額を認め、裁判前に和解で解決するかたもいるので、諦めずに交渉をすべきです。
もし、自分で交渉をする自信がなければ、こちらも弁護士に依頼して、相手の弁護士と直接、交渉をしてもらうというのも一つの手段です。最近は不倫慰謝料を請求された人のために、減額交渉を引き受ける弁護士も増えています。弁護士費用はかかりますが、やはり専門家ですから安心してお任せできるでしょう。
請求者本人が行政書士に内容証明の作成を依頼して請求してきた
行政書士が代書をしている場合に多いパターンは次のとおりです。
- 行政書士に代書を依頼するかたは、裁判をしないで早期に解決したいという場合が多い
- 行政書士は代理交渉ができない分、請求書の作成に手間をかけていることが多い
- 問題の長期化(裁判など)を避ける傾向にあり、妥当な金額であれば「減額要求」に応じやすい
- 行政書士事務所によっては弁護士と提携しているところがあるので、無視すると弁護士に引き継がれ、裁判を起こされる場合がある
請求者は行政書士のアドバイスを受けて請求内容を決めていますから、慰謝料が不当に高額というケースはほとんどありません。
また、行政書士は訴訟の代理人にはなれません。そのため、依頼者が裁判前に示談を成立させることを前提にして、内容証明作成のアドバイスをしています。もちろん、依頼者も行政書士のそうした特徴を理解したうえで代書の依頼をしているので、早期解決のために減額をしてくれるケースが多いでしょう。
交渉・回答の仕方を検討する
内容証明の差出人、書かれていることの真偽、請求額などを確認したら、それに対する回答の仕方を検討してみましょう。もし、慰謝料を減額できる、あるいは払わないですませられる条件(目次1-a,1-bを参照)がそろっていれば、相手にそのことを伝える必要があります。
電話・対面で交渉する場合
請求者が、電話・対面で慰謝料を請求してきたときは、そのまま減額交渉を始めるという手もあります。
しかし、なんの準備もせずに交渉をして、減額を成功させるというのは難しいものです。できれば、「後日、改めてお答えします」と言って、請求内容と今後の方針をじっくり検討した上で減額してほしい旨を伝えてみましょう。また、口頭で交渉をするときは、必ず会話の内容を録音しておくようにしましょう。
内容証明に対して文書で回答する場合
内容証明郵便など文書の形で請求されたときは、相手に合わせて文書で返すのが一般的です。文書のやりとりなら、とかく感情的になりやすい男女トラブルにおいても、冷静にお互いの意志を伝えあうことができます。また、文面が証拠として残るので、予防法務の観点からもおすすめできます。
慰謝料の減額を希望する回答書の書き方については、関連ページ【回答書の書き方と文例】で詳しく解説しています。
謝罪の気持ちを伝える
減額・不払いの条件がそろっていない場合でも、謝罪の気持ちを誠心誠意、相手に伝えることで不倫・浮気の慰謝料を減額してもらえることがあります。裁判でも、謝罪の意思が見られるかどうかで、認められる慰謝料の額が違ってきます。
ただ、請求者が不倫の証拠を集めるために謝罪文を要求してくるケースもあるので注意しましょう。請求者の意図をしっかり見極めることが大切です。
謝罪文のメリットとデメリットを詳しく知りたいかたは、関連ページ【浮気の謝罪文】をご覧ください。
求償権をうまく利用する
求償権とは?
不倫の慰謝料を支払った人は、その額の一部(負担割合を超えた部分)を、共犯者である不倫相手に請求することができます。このような権利を求償権と言います。
不倫の被害者は、自分が離婚をしない場合、不倫相手にのみ慰謝料を請求し、配偶者に請求することはほとんどありません。生計を共にしている家族からお金をとっても、慰めにはならないからです。
しかし法的に見ると、共犯者がいるのにその一方だけが責任を負わなければならないというのは不公平です。そこで、慰謝料を支払った側の不倫者の権利として求償権が認められるようになりました。
求償権を行使すれば、支払った額の一部を補てんすることができるので、実質的には減額をしてもらったのと同じ効果があります。ただ、求償の手続きを改めて行うのは、手間と時間と費用が余計にかかってしまうというデメリットもあります。
また、慰謝料を受け取った側(不倫の被害者)からすれば、自分の配偶者への求償であっても、同じ家計からの出費に変わりはありません。一度受け取った慰謝料を取り返されてしまうようで面白くはないでしょう。
このような事情があるため、慰謝料を請求された側は「あとで求償権を行使すればよい」と軽く考えないようにしたいものです。
求償権の放棄と慰謝料の減額
求償権の行使は当事者双方にとってあまりメリットがありません。そこで、慰謝料を請求された側は、求償権を放棄するかわりに慰謝料の減額を要求するという手段をとることもできます。
和解後に求償権の行使をしないという約束をすれば、請求者(不倫の被害者)も安心できるはずです。そして求償権の放棄と引き換えに慰謝料を少なくしてくれるでしょう。
不倫慰謝料の求償権詳しく知りたいかたは、関連ページ【不倫慰謝料の求償権】をご覧ください。
示談書を作成して減額の成果を確かなものにする
苦労をして減額の交渉に成功しても、あとで相手の気持ちが変わってしまったらすべて水の泡になってしまいます。なるべく早いうちに示談書を作成し、文書の形で残しておきましょう。
ところで、示談書の作成を減額交渉の初期の段階から始めてしまうという奥の手もあります。こちらの要求を示談書の形にして提示し、相手の条件とすり合わせながら、内容を修正していくのです。そして交渉がまとまるころには示談書も完成しているという早期解決型の作成法ですので、当事者双方にメリットがあります。
示談書に何を書けばよいのかを詳しく知りたいかたは、関連ページ【不倫の示談書の書き方】をご覧ください。
減額に成功した実例
当事務所が文書の作成サポートをしたことで減額に成功したお客様の事例をご紹介いたします。
※ プライバシー保護のため、事例経過書の氏名、住所、日付は変えてあります。
200万円の請求を30万円に減額した事例
請求者 | E川S美(夫は医師のE川M雄) |
請求額 | 200万円 |
決定額 | 30万円 |
請求者の要望 | 慰謝料200万円、交際禁止の誓約書、謝罪文、求償権の放棄、夫への連絡禁止 |
請求された女性 | K山A子(看護師、独身) |
〈平成○○年5月17日〉
まずは状況をお聞かせください |
はい。私は看護師なのですが、医師と不倫をして奥さんから慰謝料を請求されてしまいました! |
奥様からの請求書はお持ちですか? |
ここにあります。見てください |
あと、自分なりに謝罪の文章も考えてみました。ネット上のひな形を参考にしたんですけど、どうでしょうか? |
はじめに奥様からの通知書を読んで感じたことを申し上げます。通知書には『夫婦関係が修復困難』と書かれていますが、離婚する、離婚届を出した、などとは一言も書かれていませんね |
たしかに…… |
謝罪文と交際禁止の誓約書については、先方もすぐに送れと要求していますから、なるべく早く返事をしたほうがいいでしょう |
わかりました |
支払いに関しては10日後にお返事しますと伝えておいてはどうですか。減額交渉は謝罪文を送った後のほうが効果的だと思います |
なるほど……奥様の怒りが和らいだころに減額のお願いをしたほうがいいということですね |
ただ、お客様が考えた謝罪文はあまりに事務的です。パソコンで書いてプリントアウトするのではなく、直筆でお書きください |
字が下手なので、つい…… |
筆に自信がなくても丁寧に書けば気持ちは伝わるものですよ |
では、もう一度、書いてみます! |
この度は、私の浅はかな行動により奥様に多大な精神的苦痛とご迷惑をおかけしましたことを心から深くおわびいたします。
ご主人様とは今後、交際をしないことをお約束いたします。
昨年、ご主人様が転勤されることをきっかけに、交際は止めようと言ってすでに別れています。その後、ご主人様からメールが入ることもありましたが、お会いすることはありませんでした。
ところで、送られてきた内容証明を父が受け取り、今回の件を知ることになりました。父が、不倫をした私が悪いのは当然だが、上司である男性医師のほうから誘い、男が責任をとらないというのは許せない、弁護士に相談する、それまで連絡をとるなと申しております。
内容証明が、本人限定受取郵便で送られていれば、秘密は守られたと思いますが、父、家族が知ることになり、私も困惑しております。
私としては実家に住んでいる以上、父母の意向には逆らえません。
お支払いに関しては、10日ほど回答をお待ちくださいますようにお願いいたします。
取り急ぎご連絡申し上げます。
敬具
〈5月25日〉
その後の状況はどうですか? |
謝罪文は送っておきましたが、父が心配し、同席したうえで奥様に謝罪すると言っています。M雄(不倫相手の医師)にも同席してもらって慰謝料を支払うつもりでいます |
それでは、お父様が望まれるとおり、あなたとお父様の連名で文書を送ることにしましょう |
代理人になれるのは弁護士さんだけではないのでしょうか? 父でも法的に問題ありませんか? |
代理をすることで報酬を受け取ったり、何人もの相手にそのような行為を繰り返していたりすれば違法になります。ですが、お父様はあなたにお金を貸すご家族ですから、代理をしても大丈夫ですよ |
そうなんですね |
念のため委任状を書いて、お父様に同席してもらったうえで、交渉を進めるといいでしょう。委任状の書式は私が送りますから、ご利用ください |
ありがとうございます。まずは父と連名で減額してほしい旨の回答書を書いてみようと思います。内容について先生からもアドバイスをいただけますか? |
もちろんです。お父様は弁護士にも相談しているようですから、今回のようなケースでは慰謝料がどのくらいになるのかもお聞きになっているでしょう。そのまま、文章に織り込めばいいと思いますよ |
平成○○年5月28日
E川 S美 様
K山 A子
K山 T郎(父親)
謹啓
奥様の通知書に関して、父が奥様とご主人様にもこちらの意向を伝えるべきだと申しております。父との連名とさせていただきます。
娘は夜勤でしたので私が書面を受け取りました。内容証明という尋常でない手紙なので娘が開封する横にいて読むことになりました。読みすすめるうちに娘の目は泳ぎ出し、私も言葉を失いました。
ふつつかな娘がしたことに、奥様に辛い思いをさせたことを謝罪致すと共に、A子に代わって父が連名で回答を差し上げることにしました。
娘が言うには、E川M雄氏からLINEで連絡があり、実家の住所を教えてくれということで住所を教えたそうです。すると奥様が実家に内容証明を送られました。親展、本人限定受取郵便で送られていないので親が受け取り、私の前で開封させたことで、娘の不倫を知りました。
そこで、親としても心配で法律相談を受けましたが、今回の請求に対して疑問を抱いております。
送付された書面の対応に関し、ご主人様に連絡することは迷惑行為であると書かれています。確かに、請求に関しては、娘だけに請求することもできます。
一方では、不貞行為は奥様に対する不法行為として、ご主人様と娘とがしでかしたこと、二人で相当額を支払う義務もあります。
求償権を放棄する、放棄しないに関わらず、いくらお支払いをするのかに関しては、ご主人様と娘とが支払額を相談し、責任の分担額を話し合うべきと考えております。ご主人様との連絡が迷惑行為だとされることは、娘のご主人様に対する法的な求償権の行使を妨げることになります。
お怒りになるお気持ちは重々わかりますが、少々強圧的な請求ではないかと受けとめております。
法律相談によると、求償権の放棄について、過去の判例などからすると男性が6割、女性が4割の責任を負う場合が多く、上司との交際であれば、女性は3割から4割ほどの責任を負うのではないかということです。
ご主人様は医師として10年以上のキャリアがあり、娘を指導管理する立場にありながら、ご主人様から積極的に誘ってきています。
娘は、ご主人様が東京に転勤することを知り、娘の方から不貞関係には応じないということを申し出ています。M雄氏は転勤後、2回、富山に来ていますが、娘はそのときのM雄氏からの誘いも断っています。二人の不貞関係はすでに昨年4月に終わっています。
法律相談では、ご夫婦が離婚を回避して修復の可能性が見込めること、不貞関係はすでに終了し、再発の危険がないこと、こうした点を考慮し、求償権放棄を前提とするのであれば30万円を相当額として提示されたらいいのではないかとのことでした。
なお、娘は後悔で過呼吸をおこすことがあります。そこで、私が娘のA子の代理人、補佐人として、東京まで同行し、30万円を提示させていただきます。父親が娘の代理人となり慰謝料に関してお話しすることは、弁護士でなくてもできるということでした。
娘と一緒に東京に赴き、同席したうえで奥様には謝罪いたします。その際は、ご主人様も同席され、面談当日に解決することを提案させていただきます。ご検討のほどをお願い申し上げます。
謹白
〈6月10日〉
先生、奥様から返事がきました! |
減額に応じてもらえたようですね。先方は経済力のある医師の奥様です。面倒になれば弁護士さんをすぐに雇うでしょう。奥様の通知書から本心を読み取り、すぐに対応策を考えたことがいい結果につながりました |
ネットで見つけた謝罪文のひな形をそのまま送るのではなく、嘘偽りのない自分の気持ちを伝えたことが良かったのですね |
今回のような浮気の慰謝料請求は、離婚していない限り、50万から100万円でほとんど解決されています。裁判にして長期間争うことにメリットはないのです。相手の奥様も弁護士相談を受けて通知書を送られているようですから、適正な慰謝料はわかっていたはずです |
請求された200万円の慰謝料を支払わずにすませた事例
高校時代の友人の男女が、同窓会から帰る途中で休憩のためにラブホテルに入りました。入ってから20分ほど経ち、男性の奥さんから電話がありました。奥さんがホテルの入り口で待っているというのです。二人は慌ててホテルから出ました。その後、弁護士を通して慰謝料の請求書が女性のもとに送られてきました。
女性は、男性とは同窓会で10年ぶりにあっただけの関係であり、車で送ってもらう途中にたまたま休憩の場所がなかったことからラブホテルに入ったのだということを手紙で回答しました。男女関係が全くなかったことは、入室20分後に男性の携帯に奥さんから電話があり、すぐにホテルを出たことからも明らかです。
また、これまで交際をした事実はなく、証拠があるわけでもありません。
このことを説明しましたら、やがて奥さんの弁護士から「状況の変化から請求をやめる」との返事がありました。
普通は請求金額200万円を不払いで解決できるケースは珍しいと思いますが、このように状況を正確に伝えたことで、20分間に不貞関係があったと認めることは困難だと判断されたのだと思います。
減額チェックリスト
不貞行為の慰謝料を減額できる理由はいくつかあります。チェックリストを使いながら減額交渉を進めてください。
- □ 不倫がバレ、すぐに請求してきたのか、何ヶ月後に送られてきたのか
- □ 請求金額が高すぎる、過去の判例など適正額を指摘しましょう
- □ シングルマザーなど支払いが困難
- □ すでに夫婦関係が破たんしていて、不貞が原因で破たんしたのではない
- □ 何年も夫婦のもめ事が続いていた
- □ DV、モラハラ、暴力、酒癖、ギャンブル、生活費を入れない、働けるのに働かない
- □ 相手が職場の上司であり、断りにくい立場にあった
- □ 不貞行為の回数
- □ 不倫の交際期間の長短(3ヶ月未満、3ヶ月から1年、1年以上)
- □ 不貞相手との年齢差(5歳未満、5歳から15歳、15歳以上)
- □ 婚姻期間
- □ 子どもの有無
慰謝料と弁護士費用の双方とも支払いの余裕のあるかたは弁護士に相談し、依頼することをお勧めします。経済的な余裕のないかたは、ご自分で減額交渉を行うことになります。当事務所にご相談ください。
このような相談が寄せられています
減額の関連した多くの相談が寄せられています。次のような疑問、悩みを抱えているかたは無料相談をご利用ください。
- ○ パートなので給与は月15万円です。慰謝料を支払えないときはどうすればいいですか?(静岡県浜松市、女性)
- ○ 不倫の慰謝料を親から借りて払えと言われました。応じなければいけませんか?(茨城県水戸市、女性)
- ○ 不倫により退職してくれと言われました。退職するので慰謝料が払えません(千葉県市川市、男性)
- ○ 不貞行為の慰謝料に相場はあるのでしょうか(愛知県豊田市、女性)
- ○ 相手が別居中に交際が始まり、慰謝料の請求を受けました(福岡県久留米市、男性)
- ○ シングルマザーなので不貞の慰謝料を支払えません(群馬県高崎市、女性)
- ○ 浮気慰謝料の減額交渉の文例はありますか?(埼玉県さいたま市、男性)
- ○ 不貞行為の減額要素にはどんなものがありますか?(福島県いわき市、男性)
- ○ 慰謝料請求の計算方法を教えてください(東京都新宿区、男性)
- ○ 不貞行為の慰謝料請求の際に暴行を受けました。減額できますか?(新潟県長岡市、男性)
- ○ 不倫相手が妻とは関係が破たんしていると言うので交際しました。相手にも請求できますか?(栃木県宇都宮市、女性)
- ○ ダブル不倫の慰謝料請求を受けました。減額する、または不払いにすることはできますか?(宮城県仙台市、男性)
当事務所に相談に来られたかたの減額交渉期間
2005年からの統計です。ご自分で減額交渉をした相談者のほとんどが2ヶ月以内に解決しています。
減額交渉期間 | 1ヶ月 | 2ヶ月 | 3ヶ月 | 4ヶ月 | 相談件数 |
相談者の割合 | 37% | 57% | 2% | 1% | 894件 |
まとめ
最後に慰謝料の減額方法をまとめました。
- 請求内容(根拠や金額)をよく確認する
- 実際の不倫の状況が請求内容と合致しているかどうか検討する
- 合致していない場合は減額・不払いの理由になるので、その旨をきちんと伝える
- 合致している部分に関しては潔く非を認め、謝罪をする
不倫・浮気は悪いことですが、償うべき内容にも限度というものがあります。ですから、請求金額が法外だったり、請求者に事実誤認があったりした場合は、それをきちんと指摘して減額を要求しましょう。その一方で、自分の悪い部分については素直に認め、誠心誠意、謝罪をすることが大切です。
慰謝料を請求されて、孤独な状況で減額交渉をするのは、精神的に大きな負担がかかります。もし不倫慰謝料の減額サポートをご希望なら、当事務所の無料相談窓口までお気軽にご連絡ください。
着信があれば、この番号から折り返しますので、電話に出られるようにしておいてください