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内容証明郵便で不倫慰謝料を請求したい
このページでは、浮気・不倫・離婚の慰謝料を請求したい人のために、内容証明郵便の活用法を具体的に説明していきたいと思います。旦那さん、あるいは奥さんの不倫で悩んでいるかたが、ご自分で問題を解決できるようにわかりやすい解説を心がけました。
また、内容証明郵便・電子内容証明郵便にかかる費用(郵便局に支払う手数料)を自動で計算する機能も備えましたので、ぜひご利用ください。
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内容証明郵便とは?
内容証明郵便とは、誰が、どのような内容の文章を、いつ、誰に対して発送したのかを、郵便局が証明してくれる郵便物のことです。
内容証明で慰謝料を請求するメリット
不倫によって精神的苦痛を受けた人は、配偶者やその不倫相手に慰謝料を請求することができます。
慰謝料は口頭でも請求できますが、それだと、あとで「言った」「言わない」の水かけ論になり、第三者(裁判所など)に事実を証明するのが難しくなります。
また、普通郵便で請求した場合も、相手に「そんな内容の文書は受け取っていない」と言われてしまえばそれまでです。
その点、内容証明郵便であれば、郵便局という信頼に足る第三者が内容を証明してくれますので、後日、裁判になったとしても強力な証拠として活用できるというわけです。
では、「相手に文書で慰謝料を請求した」という事実を証明することにどんなメリットがあるのでしょうか。
時効の中断
不倫の慰謝料請求権は、不倫の事実と相手を知った時から3年で時効により消滅します(民法第724条)。しかし請求者は、裁判で慰謝料の請求をするなどの法的措置をとることで、時効の中断(リセット)をすることができます。
例えば、不倫の事実と相手を知ってから2年が経っていても、中断によってまた0年から数え直し、ということになります。
残念ながら、文書よる請求(裁判外の請求)だけでは時効の中断はできません。ただし、裁判を起こすなど法的措置をとることを前提に、あらかじめ文書などで慰謝料を請求(催告)しておけば、時効の完成を6ヶ月延ばすことができます。
この「催告」の効力には次のようなメリットがあります。例えば、時効完成まであと1ヶ月しかなく、弁護士探しや不倫の証拠集めなど裁判の準備をする時間がないというときに、とりあえず内容証明で慰謝料を請求(催告)しておきます。そうすれば、催告によって延長した6ヶ月の間に、訴訟の準備がじっくりとできるというわけです。
心理的な効力
内容証明を使った慰謝料請求には心理的な効果も期待できます。郵便局という第三者が内容にまで立ち入っているということで、単なる言いがかりや思いつきの請求ではなく、正式な権利の行使なのだということを、相手に強く印象づけることができます。
実際、内容証明で慰謝料の請求を受けた人は「無視したら大変なことになる」という心境になるようです。その結果、放置せずに何らかの回答をしてくる可能性が高まります。
内容証明の効力の限界
内容証明の効力について注意すべき点がいくつかあります。
「請求する根拠」まで証明する効力はない
あなたが慰謝料を請求したという事実は証明してくれますが、文書に書かれている不倫の事実そのものを証明する効力はないということです。不倫の慰謝料を請求する場合は、不倫の事実や具体的な状況(期間など)を証明するために、不倫者同士が交わした手紙・電子メール・SNSの内容、ホテルに入る写真、不倫相手の謝罪文など、別の証拠を準備しておく必要があります。
詳しくは、関連ページ【不倫の浮気・不貞行為の証拠】をご覧ください。
請求内容に法的拘束力はない
不倫の慰謝料を内容証明で請求したからといって、相手に法的な義務が生じるわけではありません。
つまり、請求した慰謝料を強制的に支払わせることはできないということです。また、相手はこちらが指定した期日までに回答をしなくても(無視・放置しても)、文書の内容を認めたことにはなりません。
内容証明の効果的な書き方
前述したように、内容証明には法的拘束力がありませんので、単に請求する意思を伝えただけでは、そのまま放置されてしまう可能性があります。そこで、相手に無視されないような伝え方、書き方が重要になってくるのです。
まずはインターネットで簡単に見つけられるような、一般的な内容証明のひな形をご覧ください。これをもとにして実践的な書き方を解説していきたいと思います。
一般的な内容証明のひな形
平成○年○月○日
通知書
(被通知人の住所)
被通知人○○○○殿
(通知人の住所)
(通知人の氏名)
冠省
私こと、○○ ○○(以下、「私」という)は○○ ○○(以下、「貴殿」という)に通知します。貴殿が、私の夫(○○ ○○)と、平成○○年○月頃から不貞行為を行っていた事実(以下、「本件」という)はご認識のとおりです。私は、計り知れないほどの精神的苦痛を被りました。私の苦痛は金銭に換算すれば300万円を下回ることはありません。したがって、本書面受領後10日以内に下記の口座に300万円をお支払い下さい。
振込先銀行 ○○銀行○○支店
(普通預金口座)(預金番号)○○○○○○○○
(口座人名) ○○ ○○
なお、私に何らかの連絡もなく、お支払いも確認できない場合は、不本意ながら法的措置をとることを申し添えておきます。
草々
この文例は必要最低限のことしか書かれていません。似通ったひな形は他のサイトでも見ることができます。
意外と思われるかもしれませんが、弁護士の先生が作成する通知書も、1、2枚ほどの簡潔な内容のものが多いようです。
しかし、文例【1】のような通知書をそのまま出しても、相手方は300万円もの大金をすぐには用意できないでしょうし、請求されている金額が妥当かどうかもわからないと思います。結局、しばらく様子を見てから返答をしようということになり、そのまま放置されてしまうでしょう。
請求者側に裁判を起こしてもよいという覚悟が本当にあれば、「法的措置をとる」という言葉のとおり、訴訟の準備を始めればよいのです。しかし、裁判前の早期解決を目指しているのであれば、文例【1】のように威圧感のある問答無用の通知書は送るべきではありません。
文例【1】を修正して効果的な文章にする
では、相手に無視されないようにするためには、どんな内容証明を作成すればよいのでしょうか。
まずは、請求される側の気持ちをよく知り、相手が回答しやすい内容に書き改めることが重要です。
請求される側の気持ちとは?
不倫をしている人は、不倫が社会的に好ましくない行為だということは理解していますが、不倫相手の夫・妻に対して悪いことをしているという意識は意外と希薄です。
ですから、不倫がばれて内容証明を受け取っても「夫を放置し、愛情をつなぎ止められない奥さんにこそ責任がある」といった具合に、自分の行為を正当化し、慰謝料を請求されたことが理不尽であるかのような発言をする人がほとんどです。
そうした人たちに、こちらの精神的苦痛を実感させ、請求者の権利を理解してもらわなければなりません。
当職が加筆・修正した文例
ここで、当職がお客様の事情を詳しくお聞きして、修正を加えた内容証明をご紹介します。
平成○年○月○日
通知書
(被通知人の住所)
被通知人○○○○殿
(通知人の住所)
(通知人の氏名)
冠省
私こと、○○ ○○(以下、「私」という)は、○○ ○○(以下、「貴殿」という)に通知します。貴殿が、私の夫(○○ ○○)と、平成○○年○月頃から不貞行為を行っていた事実(以下「本件」という)はご認識のとおりです。
私は、本件を知ってからというもの、夜はよく眠れず、食事も喉を通らないという状態で、日々、体調不良に悩まされております。私と夫が結婚をしてから12年の間に築き上げてきた夫婦の信頼関係も崩壊してしまいました。このように私の受けた精神的苦痛はとても言葉で言い尽くせるものではありません。
不貞は配偶者である私の権利を侵害する行為であり、本件は夫と貴殿とが私に対して行った共同不法行為であるため、貴殿にも損害賠償責任があります。また、本件がどのような事情によって生じたかなどは、私が関知することではないし、最高裁判例でも、不法行為の責任を回避するいかなる理由にもならないとしています(最高裁判所、昭和54年3月30日判決)。貴殿が、配偶者の存在を知ったうえで夫と交際をした以上は、夫の配偶者である私が貴殿に慰謝料を請求し、金銭をお支払いいただくことで解決するしかありません。
私の苦痛を金銭に換算するなら300万円を下回ることはありません。したがって、平成○○年○月○○日までに下記の口座に300万円をお支払い下さい。
振込先銀行 ○○銀行○○支店
(普通預金口座)(預金番号)○○○○○○○○
(口座人名) ○○ ○○
ただし、貴殿が夫との交際をやめるのであれば、私は今回限り、貴殿をゆるし、請求額を大幅に減額して100万円で和解をすることも検討しております。
私が提示した100万円での和解をご希望なら、本書面到達後7日以内に、私に宛てて、夫との私的接触をやめるという直筆で書かれた誓約書をご送付下さい。誓約書が届きましたら、減額した100万円で和解し、これ以上の請求はしないという示談書を交わして、本件を終結することにいたします。
なお、貴殿が本書面を無視し、謝罪もされないときは、反省の心がなく、夫との交際をやめる意思もないものとみなし、本件について裁判所に提訴いたします。訴訟の場合は、今回の減額の提案は全て撤回し、請求額を大幅に増額したうえで、弁護士費用を付加して慰謝料を請求するつもりでおります。
草々
では、修正した部分について、一つずつポイントを解説していきたいと思います。
精神的苦痛を目に見える形で表現する
精神的苦痛は目に見えないものですから、文例【1】のように「私は、計り知れないほどの精神的苦痛を被りました」と書いたところで、相手にあなたの受けた苦痛を実感させるのは難しいでしょう。では、どんな書き方をすればよいのでしょうか。
文例【2】を見てみます。「私は、本件を知ってからというもの、夜はよく眠れず、食事も喉を通らないという状態で、日々、体調不良に悩まされております」と加筆しました。
このように、精神的苦痛が身体の不調として表に現れているのであれば、それを具体的に記します。こちらの苦痛を目に見える形で相手にわかってもらうためです。もし、実際に精神科に通っているのであれば、状況や症状を詳しく伝えるとよいでしょう。
さらに「私と夫が結婚をしてから12年の間に築き上げてきた夫婦の信頼関係も崩壊してしまいました」という言葉も加えました。
「12年」という具体的な数字が、失ったものの大きさを実感させてくれます。そして、それほど大事なものを失ったのだから、被害者(請求者)は傷ついているに違いない、といったように、相手も被害者の心の傷を推察しやすくなります。
慰謝料の請求に法的根拠があることを示す
単に、不倫に対する慰謝料を請求します、と書くだけではなく、請求に法的根拠があるのだということを相手に伝えましょう。文例【2】では、次のように加筆しました。
「不貞は配偶者である私の権利を侵害する行為であり、本件は夫と貴殿とが私に対して行った共同不法行為であるため、貴殿にも損害賠償責任があります」
このように、不倫が民法上の不法行為にあたることを示し、損害賠償(慰謝料)を請求できる根拠を明確にしました。
さらに、判例などを引用しておくと説得力が増します。
「本件がどのような事情によって生じたかなどは、私が関知することではないし、最高裁判例でも、不法行為の責任を回避するいかなる理由にもならないとしています(最高裁判所、昭和54年3月30日判決)」
減額ができることを伝え、相手が回答しやすいようにする
300万円の慰謝料を維持したいという気持ちはわかりますが、請求する側がある程度譲歩する姿勢を見せないと、交渉はうまくいきません。裁判を避け、早期に解決したいのであればなおさらです。そこで、次のように加筆しました。
「ただし、貴殿が夫との交際をやめるのであれば、私は今回限り、貴殿をゆるし、請求額を大幅に減額して100万円で和解をすることも検討しております」
不倫をした側は後ろめたさがありますから、なかなか自分からは減額の要求ができません。そこで、あえて請求者側から減額案を提示するのです。相手方は高い確率でこの提案にのってきます。
また、相手に経済力がなく(フリーターなど)、すぐに全額を支払えそうにない場合は、慰謝料の分割払いを許してあげてもよいでしょう。合意ができたときに公正証書にしておけば、支払いが滞っても強制執行ができます。関連ページ、【慰謝料の強制執行と公正証書】
内容証明郵便費の自動計算機
【内容証明郵便】
【電子内容証明郵便】
電子内容証明郵便の特徴
電子内容証明郵便は、ネット上(郵便局のホームページ)で作成した内容証明のデータを、新東京郵便局(新東京支店)へ送信し、普通の内容証明と同様に郵便局員が宛先へ配達するサービスです。24時間対応ですし、どこからも出せるので便利です。また、配達証明もつけられ、相手が受け取ったことを確認できます。郵便局から出す内容証明とは異なり、封筒、押印も不要ですので、手間がかかりません。
まとめ
最後に内容証明を作成する際に注意すべきポイントをまとめておきます。
- 一般的なひな形・文例をそのまま使用せず、自分の状況をふまえて加筆・修正する。
- 請求内容だけではなく、その法的根拠まで示す(条文や判例の引用をすると説得力が増す)。
- 精神的苦痛が相手に伝わるように、今の精神状態や、不倫により失ったものを具体的に書く。
- 逃げ道のない請求はしない。減額や分割払いの余地があることを伝え、相手が回答しやすい内容にする。
内容証明で慰謝料の請求をしたあと、何度か文書のやりとりをして合意にいたるケースがほとんどです。話がまとまったら示談書を作成しましょう。次は、【不倫と示談書】のページをご覧ください。
着信があれば、この番号から折り返しますので、電話に出られるようにしておいてください