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トップページ不倫慰謝料の定義

このページの目次

  1. 不倫の慰謝料を請求できる理由
    1. 不倫とは
    2. 肉体関係がなくても慰謝料を請求できる?
    3. 同性カップルの不倫について
  2. どんな場合に慰謝料を請求できるか
    1. (1)故意又は過失があること
    2. (2)違法性があること
    3. (3)損害の発生との因果関係があること
  3. 慰謝料請求の根拠となる法律の条文
  4. 当職が扱った慰謝料に関する過去の事例

不倫の慰謝料を請求できる理由

不倫をしている二人は背徳の快感があるのでしょうが、不倫をされた配偶者は激怒しています。 不倫がおさまるのを耐えている間に神経を病み、過呼吸、うつ病で心療内科に通院しているかたも少なくありません。

しかし、その苦しみを晴らしたいからといって、暴力を振えば暴行罪、「不倫をやめなければ会社にばらす」などと脅せば脅迫罪に問われてしまいます。

結局、配偶者の不倫による精神的苦痛は、慰謝料という金銭で償ってもらうしかないのです。

慰謝料の金額が妥当ものかどうかは、当事者で話し合って決めることもできます。 話し合いで双方が納得すればよいのですが、争いになれば裁判などで解決をはかることになるでしょう。


「不倫」とは

ところで、一般的によく使われている「不倫」という言葉は法律用語ではありません。 「不倫」というのは、既婚者と、その配偶者以外の異性との男女関係を指す隠語ですが、法律用語では不貞行為(民法770条)と定められており、「不貞による慰謝料」といった使われ方をします。 これは離婚裁判などでよく耳にする用語ですね。

ただ、最近では裁判所の判例にも「不倫」という言葉が出てくるようになりました。 芸能人の不倫問題がテレビや週刊誌で騒がれるようになり、「不倫」という言葉の認知度が高まったためでしょう。

さて、この「不倫」や「不貞による慰謝料」という言葉ですが、その定義・考え方も時代とともに変化してきています。


肉体関係がなくても慰謝料を請求できる?

従来、不貞行為による慰謝料請求は、男女の肉体関係が必要とされていました。 ところが昨今、肉体関係のあるなしにかかわらず、配偶者が精神的苦痛をどの程度受けたかを検討して、慰謝料の金額を決定するという裁判例も見られるようになってきました。

さらに、「結婚や不貞行為は男女間でおこなわれるもの」という、今まで当たり前に考えられてきた価値観も見直す必要が出てきています。


同性カップルの不倫について

2015年から渋谷区などの一部の自治体で、パートナーシップ制度が導入され始めました。これは、自治体が同性カップルを結婚に相当する関係として認め、性的マイノリティーの人々が社会生活で不利益を被らないようにするための制度です。

日本ではまだ同性婚は法的に認められていませんが、パートナーシップ制度が導入されたことによって、同性カップルの暮らしや周囲の意識は確実に変わっていくでしょう。

そして、こうした時代の流れは不倫裁判の判決にも変化をもたらしています。

2019年9月18日、宇都宮地裁真岡支部は、ある同性カップルの関係を「事実婚」に準ずる関係と認定し、不倫をした元パートナーに慰謝料の支払いを命じました。


裁判例(引用:WLJ)
【令和元年9月18日】
裁判所名:宇都宮地裁真岡支部
裁判区分:判決
事件番号:平30(ワ)30号
事件名:損害賠償請求事件
文献番号:2019WLJPCA09189006
要旨
同性カップルが米国で結婚し、長期間同居していましたが、一方が、不倫を理由に元パートナーに対して慰謝料を請求しました。

宇都宮地裁真岡支部は18日、2人は「事実婚(内縁)」に準ずる関係だったと認定し、法的保護の対象になるとし、元パートナーの被告女性には慰謝料などとして110万円を支払うよう命じました。

また、憲法24条が婚姻を「両性の合意のみに基づく」としているのは「憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからに過ぎず、同性婚を否定する趣旨とまでは解されない」と判示しました。

裁判官は、事実婚は男女間を前提にしてきたが、諸外国で同性婚が認められ、日本の自治体が同性カップルを公的に認証する制度を作るなどの社会情勢の変化を踏まえ、「同性カップルでも一定の法的保護を与える必要性は高い」と判断しました。 その上で、実態から事実婚と同視できる関係であれば、不法行為に伴う法的な保護を受けられるとしました。

同性カップルは約7年間同居し、米国で結婚証明書を取得し、「男女間の事実婚と何ら変わらない実態を有している」と認定しました。

ただ、日本では法律上、同性婚ができないため、「男女間に認められる事実婚における法的保護の利益とは違いがある」として、慰謝料などは110万円としました。

この判例は、同性カップルの権利を保護しようという世の中の動きや、自治体のパートナーシップ制度への追い風になるでしょう。


どんな場合に慰謝料を請求できるか

不倫の慰謝料とはどういう場合に発生するのでしょうか?

法律では、故意または過失によって他人に損害を与えることを不法行為といい、賠償義務が課せられます(民法710条)。 また、損害というのは財産や身体へ与えられるものだけではなく、精神的な苦痛も含まれます。この精神的苦痛に対して支払う金銭を「慰謝料」といい、お金でしか支払うことはできません(民法419条1)。

不倫もまた、配偶者の権利を侵害する不法行為といえるので、精神的苦痛を受けた配偶者に慰謝料請求権が認められるというわけです。

では、不倫(不貞)などの不法行為が、どういう場合に成立するのかをチェックしてみましょう。


(1)故意又は過失があること

故意とは、自分の行為が他人に損害を与えることを知って、あえてその行動をすることです。 これは行為者の心理状態を表現しており(民法709条)、 行為の結果、損害が生じた場合は賠償することになります(民法710条)。

過失とは、法律上要求される注意を怠って、不貞をすることです。 注意義務の標準は普通の成人ということになります。

既婚者だとは知らずに肉体関係をもった場合などは、「過失」があったかどうかが問題になるでしょう。

例えば、相手が会社の同僚で、既婚者であることは周知の事実であったという状況では、知らなかったことにも落ち度があったと判断されるかもしれません

このような場合、「故意」はなかったとしても、「過失」があるということになります。その過失の程度は、損害賠償額を減額する際に判断の基準になるでしょう。

不法行為の「故意」「過失」を立証するのは請求する側(被害者)なので、不貞行為の慰謝料を請求する場合は肉体関係をもった事実だけではなく、故意または過失があったことについてもきちんと証拠をそろえておく必要があります。

不倫の証拠は早めに、周到に用意すべきですが、それはあくまで裁判上の問題であり、当事者が不倫の事実を認めてしまえば「自白」したことになります。

「不貞の事実」があったかなどは、最終的に裁判官が判断することになります(民事訴訟法247条、自由心証主義)。 裁判官は証拠により合理的理由で判断をしていいことになっているのです。

『夫婦の一方と肉体関係を持った第三者は、故意または過失がある限り、誘惑して肉体関係を持ったか、自然の愛情によったかに関わらず、損害賠償義務がある(最高裁判所判例昭和54年3月30日)』 つまり、相手が既婚者だと知っていて肉体関係をもてば慰謝料を払わなければなりません。


(2)違法性があること

違法性は、家庭生活の平和を乱したことと、広く考えていいでしょう。

家庭生活が崩壊すれば、事実上の離婚状態ともいえ、きわめて違法性が強くなりますが、家庭が崩壊に至らなくても家庭内のもめごとがおきている以上、十分慰謝料を請求できます。

従来、不貞行為は男女の性交渉がなければ認められず、条件が厳しかったのですが、最近は性交渉がない場合でも、交際を止めず、その為に酷い精神的苦痛を受けたというようなケースで、金額は少ないものの、不法行為として慰謝料を認める判例が見られるようになってきました。


(3)損害の発生との因果関係があること

不法行為は、故意又は過失によって他人の権利を侵害することですが、この加害行為(具体的には配偶者と第三者の不倫)と損害(不倫をされた配偶者の精神的苦痛)との間に因果関係がなければなりません。 因果関係とは、不倫という原因があり、その結果、精神的苦痛、不眠、体調不良、食欲不振、家庭不和といった損害が発生することです。

当職が扱った事案では、精神科の医師が診断書に「不倫による精神的苦痛が生じた」と書いてくれるケースもありました。 これは配偶者の不倫と精神的苦痛の因果関係を示す証拠の一つといえます。


すでに婚姻関係が破綻していた場合

不倫の相手が原因ではなく、別の理由で夫婦関係が破綻していた場合、その不倫相手には夫婦の破綻の原因、責任が無いので慰謝料請求はできません

例えば、夫婦が離婚したいと協議したものの、居住マンションの残債が整理できずに離婚できないという状況のなかで夫婦の一方が不倫をした場合などです。

夫婦の破たんの事実は不倫をした側が立証しなければならず、そのハードルは極めて高いといえます。


慰謝料請求の根拠となる法律の条文

不貞行為(不倫)に関して適用される民法などの条文

民法709条 故意又は過失によって、他人の権利又は法律上 保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
不倫などをしている愛人、配偶者は不法行為者として損害賠償責任があります。
【第709条】 故意又ハ過失ニ因リテ他人ノ権利ヲ侵害シタル者ハ之ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任ス 法行為に対して慰謝料という損害賠償を請求できます。
民法710条 他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない。
財産以外の精神的苦痛の損害賠償を明記しています。
【第710条】 他人ノ身体、自由又ハ名誉ヲ害シタル場合ト財産権ヲ害シタル場合トヲ問ハス前条ノ規定ニ依リテ損害賠償ノ責ニ任スル者ハ財産以外ノ損害ニ対シテモ其賠償ヲ為スコトヲ要ス
民法719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。 不注意(過失)の場合も同様に賠償責任があります。
共同不法行為ということで、不倫者の主人も女性も奥さんに慰謝料などの損害金を払うことになります。
【第719条 】数人カ共同ノ不法行為ニ因リテ他人ニ損害ヲ加ヘタルトキハ各自連帯ニテ其賠償ノ責ニ任ス共同行為者中ノ孰レカ其損害ヲ加ヘタルカヲ知ルコト能ハサルトキ亦同シ A 教唆者及ヒ幇助者ハ之ヲ共同行為者ト看做ス
民法724条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。 不法行為を知ってから僅か3年で消滅します。
民法770条 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。
(1)配偶者に不貞な行為があったとき。
(5)その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

不貞行為があれば離婚の理由となります。
民法722条 第417条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
2 被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。
(損害賠償の方法)
第477条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。
民法418条 (過失相殺)
債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。

損害賠償の方法・過失相殺については、債務不履行の条文と全く同様に、@金銭賠償の原則と、A過失相殺が規定されています。
民法167条 通常の債権の消滅時効は10年なので債務不履行による損害賠償請求権は10年間行使することが出来ます。
民事訴訟法247条 (自由心証主義)裁判所は、判決をするに当たり、口頭弁論の全趣旨及び証拠調べの結果をしん酌して、自由な心証により、事実についての主張を真実と認めるべきか否かを判断する。


当職が扱った慰謝料に関する過去の事例

◎妻、職場に公表しないという条件で内々に処理したいと、400〜500万円でも慰謝料を払う方がいます(リッチな地位保全型)

◎フリーターでお金が無く慰謝料が払えない、という方もいました。その方は給料明細表とサラ金からの借入表を持参し、破産寸前であることがわかったので、破産しないよう私も話し合いに加わり、電卓で支払える額を割り出し、月1万円の30回分割払いということでお互いに合意しました。

高額の慰謝料を請求して、相手に破産されたらたまりません。支払い額は相手の支払い能力によって決まってくるので、お金の無い人からは取れないのです。

実際の相手との交渉では、相手が支払い不可能な金額は請求しないほうがよいでしょう。 相手の資産・収入・支払い能力はよくわかって請求しても、あまりに高額だと話がまとまりにくくなります。

高額を要求する以上、金額の妥当性や、その根拠(理由)を明確に説明して相手を納得させなければ、相手は要求額を支払うことができず、「それでは裁判で解決しよう。先に訴えてくれ」と開きなおってしまいます。



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